
なぜミラーレスか
「プロカメラマンは、カメラ選びで悩むことは、ほぼない。」と以前書いたことがあるような気がする。
35 型カメラを選ぶとして、プロで仕事をするなら、以前なら事実上 Canon か Nikon(レンタルなどの都合もあり)しかなかった。
例えば Nikon で高画素高画質を求めるなら D850 スピードを求めるとすれば D5 コスパなら D750 と決まっていたからだ。
求めるものによって選べばよい。
けれども、今回は悩んだ。
SONY から α7RⅢが出た1年半前頃から、近い将来、ミラーレス機に切り替える時が来るかなと思っていた。
実は、2013年 α7の初代が出た時、「これは」と思いすぐ購入した。
画質は素晴らしかったし、ZEISS レンズも、あらためていいなと感じた。
結局、僕の手元にあったのは、二ヶ月ほどだった。
フォーカススピードが遅かったのと、シャッタータイムラグが大きいことに我慢が出来なかった。
フイルム時代の中判カメラみたいな操作感だと感じた。
ミラーレスに、可能性は感じたものの、まだ、仕事では使えないというのが、あの時の結論。

あれから5年が過ぎ、今や α も三代目となった。
ミラーレスに切り替えるカメラマンも急激に増えてきた。
ミラーレスを選ぶメリットを思いつくまま書くと。
・ボデーがコンパクトで軽量
・オートフォーカスが正確
・オートフォーカスの有効範囲が広い
・瞳AF が使える(機種もある)
・ファインダーをのぞいたまま拡大表示できるので、マニュアルフォーカスのレンズも安心して使える
・設定にもよるが、見える画像がそのまま写っている。一眼は、みた画像と写った画像は別物
・ミラーがない分フランジバックが短いので、レンズ設計が有利。良いレンズが出てくる可能性が高い
・広角レンズは、コンパクト
一方デメリットもある。
・堅牢性や防塵防滴、耐寒性などボディの信頼性がまだ不明(プロカメラマンに磨かれていない)
・使えるレンズがまだ少ない。アダプターを介して一眼レンズを使うのは、ミラーレスのメリットを半分捨てるみたいで好きではない
・望遠系のレンズは、それほどコンパクトではない。一眼用レンズとほぼ同じ
・ファインダーに実像が見えない。EVF(電子ビューファインダー)は、被写体の動きと見える映像にタイムラグがある
・被写体を経験がないEVFで見ることによって今まで培った感のようなものが働かなくなり、写真が変わってしまう可能性も捨てきれない
・EVFは、長時間見ていると疲れそうな気がする(まだ、経験していないのでわからないが)
・慣れの問題でもあるのだが、操作が直感的ではない
・機種によるが、メディアがダブルスロットになっていない。メディアによる事故は2度経験している。プロは臆病だ。これは、きつい
・カメラが小さくてプロっぽく見えない
書いてみたらデメリットの方が多いのだが、これは、自分の気持ち。変えるのが面倒とか、不安と言った気持ちも含まれているのかも。
プロとして、一眼レフだけを使い続けるのは危険だと感じた理由。
・10年先一眼レフが残っているか不明。例えばフィルムカメラからデジタルカメラへの移行は、あっという間だった。
デジタルへの移行期、「Nikon は、フイルムカメラを作り続ける」と宣言していたが、F6 以降は、なかった。
そして今、Nikon は、一眼レフは、やめないと言っている。D6 は、意地で出すかもしれないけれど、市場が受け入れなければ終る。
連写性能、AF性能、コスパにおいてα9 は、Canon,Nikon の先を行っている
・今メイン機としている Nikon D850 は、一眼レフとして、ほぼ最終形だと感じる。D800 D810と使ってきたが、少し進歩していても、
ほぼ、変わっていないとも感じる。(Canon も5DⅡのときから、それほど大きな差を感じない)
・これがいちばん問題なのだけれど、絞り開放だとオートフォーカスは信用できないことを前提に使わなければならない。
つまり、余計に撮るし、時間もかかる。オートフォーカスの精度の問題は、いつまでたっても解決しないように思える。
位相差 AF の構造上の問題。
Nikonサービスセンターの責任によるセンサー交換で思い知ったのだが、センサー取付をを人の手で行なっている限りミクロの精度を
出せないのではないか。
レンズ個々にマイクロアジャストメントをしてやっと使えるのだが、ズームレンズだと広角側と望遠側両方合わせるのは難しい
なぜ、Nikon または Panasonic にしなかったのか。
フルサイズミラーレスは、先行するSONYに加えCanon , Nikon ,Panasonic も選べるようになった。
触ってみて、違和感なく手に馴染むのは Nikon Z7 だった。今使っているのは、Nikon D850 だから当たり前といえば当たり前なのだが。
EVF(ファインダー)の出来も一番良い。一眼レフみたいだ。
それでも、Nikon を選ばなかった理由は、
・カードスロットがシングル
・当面、選べるレンズが少ない
・レンズマウント情報を開示していないから、サードパーティ製レンズの開発が遅れる可能性が高い
・ミラーレスカメラは、AFを含め、センサーへの依存度が高い。センサーが自社製ではない Nikon は不利になるのではないかと感じた
今までミラーレスを買わなかったのは、 Pana S の発表を待っていたから、SIGMA LEICA と組んだ Pana には、かなり興味があった
でも、選ばなかった理由は、
・でかくて重い。D850 より重いのにはびっくり。むかし、荷物は、アシスタントが持つものだったけれどね。手に馴染む大きさは、
あった方が良いけれども、開発者も30kgほどの機材を持って旅行してみたほうが良い。毎日やってみたら、何が大切か分かると思う。
・当面、選べるレンズが少ない
・プロ向け機材レンタルショップが、まだ対応していない。将来どうなるかわからない
・AFがコントラスト AF だけらしい。像面位相差ハイブリットに比べAFスピードが劣る可能性が高い
・今の所、使っているプロカメラマンが、ほぼ、いない
・誰に向けて開発したのか分からない。アシスタントなしのロケが多いカメラマンは使えない。
スタジオだけで撮影するプロなら、選ぶ可能性もあるが、人を撮るならAFシステムはどうかな。
その辺レベルだと中判の魅力を知っているから FUJI もありかも。hasselとか P1 , Lとかは、高過ぎ論外。
なぜ、SONY α にしたのか。
・瞳 AF が優秀
・使っているプロカメラマンが多い。これ実は大事なことで、珍しいカメラだと、レンタルスタジオのスタジオマンやアシスタントが
経験を持っていないから、何かあった時に対応できない可能性が高い(故障した際、どこで手配できるか知識がある等)
・選べるレンズが豊富
・優美レンタルなどのプロ機材レンタルショップが対応しているから、必要な時、持っていないレンズなども用途に応じて借りられる
・三代目であること。カメラは開発者の能力だけでは、進歩しないと考える。カメラマンからのフィードバックが多いことが必要
・マウント情報を開示しているから、他社製レンズも選び易い
・他社製アクセサリー(SmallRigなど)が豊富なので、使い方に合わせてカスタマイズし易い
・世界シェア No,1 の CMOS イメージセンサーメーカーであること。未来に向けて圧等的に有利
・ZEISS のレンズが AF で使えるのは嬉しい
・Eマウントのサイズが小さいことが、レンズ開発において不利になるとも言われているが、フランジバックが短いことも考えると、
それほどでもないと思われる

実は、僕がカメラマンになったとき使っていた35mmカメラは、CONTAX RTSⅡだったから、ZEISSレンズの良さは知っている。
好きなカメラとレンズだったのだが、ボディ(シャッター)の故障が多かった。
そして、独特な使い勝手によるアシスタントのミスから事故も起こった。
フィルム巻き戻しノブとシャッタースピードダイヤルが、同軸上にあり、フィルム交換時にシャッタースピードが意図せずに変わってしまうのだ。
ストロボ撮影でこれをやらかすと、幕切れという事故が起こる。
五人グループを撮ったのに3人しか写っていなかった、スマップをとったのにキムタクが写っていなかっというようなことだ。
というわけで、仕事がなくなる前に、カメラマンデビューからわずか数ヶ月で Canon に買い替えた。
Canon を選んだ理由は、みんなが使っていたからだった。
カメラマンにとって、「みんなが使っている」というのは大事だ。
1988年の new F1 から 2008年の EOS 1DsⅢまで20年ほど Canon を使っていた。
その後は、Nikon で現在に至る。
フイルム時代、実際に仕事で多く使ったのは、中判カメラのMamiya RZ, FUJI 68, PENTAX645 あたりだったような気がするけれど。
ちなみに、フォーチュン誌の依頼で Canon 御手洗会長を撮った時のカメラは、FUJI 68 だった。
カメラマンとしてのみえはるだったのだと思う。
その時、御手洗会長は、「そのカメラのように写すには、一千万画素以上必要なので、まだ無理」と言っていたような気がする。
「でも、デジカメはコンパクトになるので、仕事が楽になります。ぜひ、考えてみてください。」とも言ってくれた。
今、どのメーカーのものも、その言葉をはるかに超えている。
もう一度 ZEISS が使えるのは嬉しい。
しかも、正確なオートフォーカスで。
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