写真写りが良くなるコツ 2

5 衣装の用意

ビジネスポートレートの衣装
マーティン・コムストン 2002年 撮影 清水博孝

結論から言うと、サイズを合わせましょう。です。

特にスーツの場合、肩幅とシャツの襟をジャストサイズにするのは、必須です。

どんなに高価なスーツでも、サイズがダブダブなだけで(反対も)頼りない雰囲気になってしまいます。

 

これからあげる点に気をつけていただければ、信頼感や安心感、仕事ができる雰囲気が、グンと上がります。

 

撮っていて気になる点を、気になる順に書いていきます。

・肩幅が余裕あり過ぎの場合が多い。これ、一番大事、撮影時または、撮影後の修正不可なことが多いので、ジャストサイズで。

・シャツの首回りサイズが大きめの方が多い。撮影用に、余裕は必要なし。少しきついくらいがジャスト。ただし、ボタンがはまること。

・袖の長さが短いことも多い。ワイシャツが少し覗くくらいに。右写真のマーティンは、シャツ長すぎかも。

 

・スーツの襟幅とシャツの襟の高さ、ネクタイの幅のバランスをとる。幅広の襟と細いネクタイでは、合わないなど。

 

・体型にあったシュルエットを考えてみる。お腹が出ている男性なら、ダブルのスーツも試す価値あり。

・細身のスーツに、胴回り余裕ありサイズのシャツはNG。だぶつきがあるとVゾーンがきれいにきまらない。

 

男性のことが多くなったのは、仕事をするとき、肩や首が窮屈なのが嫌という方が多いからだと思われます。

加えると、紳士服専門店で、ジャストサイズを勧めると窮屈と言う理由で売れにくくなるといった事情があるようです。

 

今では、パーソナルスタイリストに買い物を手伝ってもらう方が増えてきました。

いいスーツなら、それなりの価格がしますから、失敗するとばかになりません。

もし、洋服の勉強するのがちょっと面倒と思うのなら、プロに依頼するのは、とても良い手段だと思います。

スタイリストの洋服に対する知識は、圧倒的です。

 

サイズが合っているスーツなら、着崩してみることもできます。

ノーネクタイ、またはシャツなしTシャツのみで、スニーカーを合わせてみたりするのもありです。

一通り、衣装を選んだら出来るだけ、カメラマンにメールなどで写真を送って「こんな感じでどうでしょうか?」と相談してみてください。

 

 

さて、写真の印象にとって大事なのは、見てもらう順番(視線誘導)、どこを先に見てもらうかです。

大きな姿見の前に少し離れて立って、この服装で一番最初にどこに目が行くのかを意識しましょう。

人間も動物も同じらしいのですが、明るくコントラストの強い所に最初の視線をもっていきます。

 

白シャツに黒ボタンや、色ステッチ入りシャツなどは、写真になると悪目立ちしますから注意してください。

 

最後に全体のバランスを、もう一人の自分になったつもりで眺めてみてください。

6 ヘア&メイク

ビジネスポートレイト 宣材写真のヘアメイクについてサンプル写真
ボイストレーナーの真子さん

プロのヘア&メイクがつけられるスタジオなら、だんぜんメイク付きをお勧めしますです。

コストはかかりますが、とくに女性の場合、コスト以上の効果が見込めます。

ヘア&メイクアーティストは、モデルの骨格や実際のライティングに合わせて、立体感のあるグラデーションを作ります。

自分メイクは、どうしてもペタッとなりがちです。

また、美容院でメイクをしてこられた方に、時々見受けられるのは、ファンデ濃すぎの場合が多いことです。

 

今は、カメラの解像度が上がっていますから濃すぎは、すぐばバレます。

ビジネスポートレイトの場合、特別な意図がある場合をのぞいてナチュラルメイクが基本です。

 

不自然にならない程度に、まつげを足すと目がパッチリ見えます。

白目のキレイさも大切なポイントですから、前日の睡眠をしっかりとってください。

そして、メイクの時に大事なのは、気に入らないまま放置しないことです。

 

メイクが「なんかイマイチ」と感じたら、メイクかカメラマンに相談してください。出来るだけ早めに!

撮影スタジオには必ず、「イケてる!」という気持ちで入りましょう。

 

「男性でもメイクは必要ですか?」と聞かれることがあります。

これは、その人の普段の姿と求める写真によって全く違ってしまうので、一概には言えませんが、基本的には、ヘアメイク付きをお勧めします。

肌を見てファンデーションは必要ないと判断することもありますし、髪の毛を触っただけということも無くはありません。

結局、少しグルーミングをしただけということもあります。

でも、何もしてもらわなかったのに、支払いだけが増えてもったいなかった、ということには、多分ならないと思います。

美意識の高い仲間が一人いてくれるという安心感は、代えがたいものがあるからです。

 

メイクを付けない場合でも鼻毛、眉毛のチェックをお忘れなく。

できれば、自分のシェーバーをお持ちになって下さい。

朝剃っても、撮影時には伸びていることが良くありますし、最初、髭はそのままで男っぽく撮り、剃って清潔顔、というふうに変化が付けられます。

 

頭髪が薄くて自分で気になる方は、予約時など事前にカメラマンに伝えてください。

写真の技術で対応できるか、事前に確認しましょう。一人一人に合わせてライティングをするスタジオなら、聞いていれば、対応できることが多いからです。


正直に言いますが、撮影後「ちょっとイマイチ」と後悔しやすいのが、髪型と髪のボリューム感。

メイクしている現場では、雰囲気に流されて、「いつもと違う自分=いいかも!」と思ってしまうことがあります。

今回の写真の目的を、もう一度確認してください。

いつもの通りが良かったということもありえますから、注意が必要です。


アンナ・ガリエナ 撮影 清水博孝 1990年
アンナ・ガリエナ 撮影 清水博孝 1990年

この写真は、イタリア出身の女優、アンナ・ガリエナです。

パトリス・ルコント監督の「髪結いの亭主」のプロモーションで来日の時に撮らせてもらいました。
この時、その他大勢のカメラマンとして、5分くらいの撮影枠をもらっていて撮ったのですが、撮影が終わりかけた頃、通訳を通して「あなた、もっとちゃんと撮りたいでしょう」と声をかけてくれました。
ポラロイド写真を見て、気に入ってくれたらしいのです。

その後、主催者が調整してくれて、別枠で、たしか1時間、ホテルの彼女の部屋で撮らせてもらいました。
今では、考えにくいことですが1990年頃は、そんなこともありました。

それにしても、このセクシーさ、どうでしょう。
ポージングとか、そういうことを超えていますよね。

この時、新人カメラマン清水が一生懸命撮影したのは当然ですが、興奮していたのか、残念なことに、この1時間を詳しく思い出すことができません。

 

でも、ライティングを見ると技術的なことは、思い出します。
3灯の大きなソフトボックスを使っています。カメラは、Mamiya RZ67という重いやつです。
背景も持ち込んでいますから、荷物の大きさを考えると、楽器ケースではないですが(笑)ちょっとすごいです。重さはたぶん、60キロ以上。今だとホテルの表玄関からは入れないですね。きっと。


7 コンプレックスは、隠さず相談

隠さない方が良い例 二の腕
このくらいの修正なら、その場で見せてもらえることも多いと思います

写して欲しくないところ、どう写るか不安と感じることがあれば、カメラマンかヘアメイクに話してください。

無理に隠すと不自然なポーズになってしまいますし、隠すのは嘘をつくことと似ていますから、表情にも出てしまいます。


プロは、技を持っていますから、何もなかったように進められることが多いと思います。

「それは、ライトで対応できます」「レタッチで消えます」みたいに最初に解決してしまった方が気持ちも楽です。

撮影途中に見えてしまい、対応しようとすると、ライトのセッティング変更などの対応に追われて、撮られる方も撮る方もエネルギーを使ってしまいます。

撮影当日は、バタバタすることが多いですから、出来ることなら、予約か事前打ち合わせの時に相談するのが、良い方法です。

この写真を撮らせてもらった時も、「着たい洋服があるんだけど、二の腕がこれだから、どうしよう」と悩んでいました。

試しに着てみてもらい、その場で Photoshop での修正をお見せしたところ「よかった!」と笑顔を見せてくれました。

修正に対応しないスタジオもあると思いますので、確認が必要です。

8 第三者の視点

撮影の前一歩引いた目で自分を見る
スターブランド株式会社 経営コンサルタント 村尾隆介さん

俳優やモデルは、なぜ、撮られ上手ななのか?

 

それは、自分が第三者からどう見えているかが見えているからです。

 

彼(彼女)たちは撮られる、見る、知る、直すを限りない数繰り返していますから、『自分が何をすれば、どう写るのか』を知っています。

もともと綺麗だからではなく、訓練あっての撮られ上手なのです。

 

自分でできる身近な方法としては、普段から足の位置、骨盤、重心、背筋、肩、顔の角度、口角というようにチェックポイントを絞って、全身が見える姿見で、一歩引いた目で、もう一人の自分を見る気持ちで自分の姿を見るるクセをつけることでしょうか。

最も効果的なのは、スマホで自分の動画を撮ってみることです。

スマホ用三脚は、アマゾンで安く手に入ります。

自分の歩く姿は、なかなか衝撃的ですよ。

「誰だこいつは!」って。

繰り返しているうちに、イケてる自分も発見できるようになります。

 

不思議なもので、自分をよく見るクセをつけていくと、カメラの前に立った時にテレから解放される時間は短くなります。

肯定できる自分を知っていることが、強みになるのだと思います。

 

男の私から見ても、いつもカッコいいなと思う友人がいます。

 

右の写真の彼、経営コンサルタントの村尾隆介さんなのですが、カメラを向けた瞬間に、表情はもちろん、指先からふくらはぎにいたるまで脳の統制下に入っています。

彼は、ほぼ毎日、講演やセミナーなどの動画で、自分の姿を見て知っています。

もともと、運動神経とセンスの良さは、抜群な方ですが「見て知って直す」の効果も、きっとあると思います。

 

言葉も素敵です。

 

「朝起きたら、ず〜っとカメラが回ってる」と思って生きると言います。

 

第三者の視点が、いつもあるのです。

 

彼は、ほとんどお酒を飲みません。

「なぜ」と聞いたら「お酒は飲めるけれど、飲んでいる自分が好きじゃないから」なのだそうです。

 

ず〜っと、もう一人の自分がいるわけですね。

 

よく撮影に来てくれますが、たいていの場合、1カット3分もあれば、使える写真が撮れてしまいます。

 

このカバンなどの小道具まで、彼が用意したものです。カメラマン以上に自分が写る姿が見えているわけです。

 

カメラマンの僕から見ても、俳優顔負けの撮られ上手です。


・コツは、見て知って直すこと

Contents

・撮影の前に考えてほしいこと
・この記事を書いた人は?

リラックス

顔の角度
・コラム

表情
姿勢・ポージング

イメージに自分を近づける
10
カメラマン選び

カメラマンから

アンケート

・光の責任
・コラム
・写真は掛け算