食べ物を自然光で 。3回「光源」

前回は、点光源と面光源について書きましたが、今回は、光源そのものについて書きたいと思います。

太陽光、白熱灯、LED、蛍光灯などのことです。

ホテルニューグランドのオムレツ
ホテルニューグランド ルームサービスのオムレツ

*撮った時に考えていたことと撮影データ

午前11時前後、窓の近くで撮影。70%くらいが曇りの太陽光30%くらいが天井からのハロゲン電球の光のミックス。
天井照明を消して窓からの光のみで撮ることも出来たが、ハロゲン球の温かみをプラスした方が良いと判断。


撮影データ Canon EOS-1Ds Mark II  EF24-105mm/f4 iso250 1/80sec f4  rawで撮影 

・raw編集
Adobe camera rawで編集 色温度5800k プロファイル Adobe ビビット
トマトジュース等の背景が暗く見えるので、部分補正で+1.0
ハロゲンの光を生かし、少し暖色系に。
オムレツの黄色が、飽和しているが、あまり気にせずギリギリ明るく全体の雰囲気優先の raw 編集。
飛んでしまうのは仕方がないけれど、ハイライト領域の階調はできるだけ残したいので、ハイライトをマイナスにして白レベルを上げる。


ミックス光

プロカメラマンが、商品を撮影するとき、基本的には光源を混ぜません。

 

例えば光源が2個必要な場合、ストロボならストロボだけを2個使うということで、白熱灯+ストロボの様な使い方は、あまりしません。

光が混じってしまうと、色をきれいに出すことが難しくなるからです。

でも、スタジオ以外の場所、ホテルやレストランでの光の環境は、ほとんどの場合、窓からの太陽光と天井からのハロゲン球の光という様に、ミックス光である場合が多いです。

というわけで、今回の写真は、ミックス光で撮ったものにしました。

その写真がどんな役割を求められているかによりますが、僕は、レストランの雰囲気やイメージを伝える写真なら、基本を外れても許されると考えています。

曇りの自然光とタングステン電球の組み合わせなどは、雰囲気があってなかなか良いと思います。

ただし、組み合わせる光源の種類によっては、良くない結果になってしまう事がありますから、油断できません。

カメラマンは、そこが初めての場所なら、撮影に備えてにロケハン(下見)に行くことがよくあります。

行けない場合は、スマホで撮った写真を送ってもらったりします。

何をどう撮るのかを考えるのはもちろんですが、撮影予定時間の陽の方向やその場所の光源がどんな種類のものか、とても気になるからです。

使わない方が良い光源

写真を撮っていて、「いつもはきれいに撮れるのに、今日は、上手く写らない」と言うようなことはありませんか。

それ、光源が原因かもしれません。

カメラのホワイトバランスオートで撮ってみて色が濁っている、赤など特定の色が出ない時、カメラの設定よりも光源そのものを疑ってみた方が良いかも、ということです。

普段の生活で意識することはあまりないかもしれませんが、ある特定の光源の下では色が見えにくくなります。

特に料理の写真は、色が汚いと美味しそうには見えませんから、大事なポイントだと思います。

 

光源には、ぱっと思いつくだけでも太陽光、ストロボ、白熱灯、蛍光灯、LED、水銀燈、ナトリウムランプなどがあります。

細かく分けたら、数え切れないほどあって、全部の特徴を覚えるのは専門家じゃないかぎり無理と思えるほどです。

それぞれの光源は、光の色(青みがかったまたは、黄味がかったと表現される)「光色」と照らされたものの見え方「演色性」に違いがあります。

蛍光灯やLEDで言うと、暖かい色=電球色、寒色=昼白色と言われていますし光色の方は普段から意識すると思います。

でも、演色性のことは、あまり意識しないのではないでしょうか。

実は、写真にとってくせ者なのは、演色性です。

説明すると長くなるので、単純に言いますが、光色は、カメラのホワイトバランス設定やRaw編集で補正できますが、演色性は補正できません。

演色性が悪い光源で人を撮影すると、生気がない感じになってしまいます。

食べ物を撮って後で補正したとしても、自然な色にはなりません。

 

 

具体的に言うと、普段目にする最も演色性の良い光源は太陽。

RA という単位で言うと100 です。RA 値が、100に近いほど演色性が良く、低いほど悪くなります。

それに次いで良いのは、白熱灯やハロゲン球です。

高温になる効率が悪い光の方が演色性が良いと言われています。

悪い光は水銀灯やナトリウムランプです。RA 値は、20~40 くらいです。

道路の水銀灯の下で人の顔を見ると気持ち悪くありませんか。あれです。

これ以上説明するとダラダラ長くなるのでやめます。

とりあえず、そこの光源が水銀灯かナトリウムランプだったら、色が綺麗な写真は、あきらめた方が早いです。

カメラマンをやっていて、困ったなあと思うことが多いのは、古い体育館やスタジアム、半分は水銀灯で半分は LED なんて現場では、「色が悪いのは俺のせいじゃないからね」と言い訳したくなります。

プライムリゾート賢島 伊勢海老のブイヤベース(料理名は不明)
プライムリゾート賢島 伊勢海老のブイヤベース(料理名は不明)

*撮った時に考えていたことと撮影データ

お客様がいない時間に、直射日光が当たらず自然光が入る窓近くの席で撮影。自然光を使う撮影では、ものとカメラ位置でライティングが変わるからツヤの出方を観察しながら場所決め。

窓からの光がほどよく伊勢海老とアスパラに映り込みツヤが出て、かつハロゲンのダウンライトがバランスよく入る位置を探して撮影。
特にミックス光の場合、現場でカラーバランスを決めて JPEG で撮って
しまうのは危険、raw で撮って編集の余地を残したい。

撮影データ Canon EOS-1Ds Mark II  EF24-105mm/f4 iso200 1/100sec f4 撮影時ホワイトバランス 6000k  rawで撮影 
・raw 編集

Adobe camera rawで編集 色温度 6500 k  プロファイル Adobe ビビット
全体を明るくすると、伊勢海老の白が飛んでしまうので、部分補正で白トビをおさえる。


LEDは?

今、最も多数派と思われる LED 。

カメラのホワイトバランス設定に蛍光灯はあっても、LEDという項目はないはずです。

カメラメーカーに聞いた訳ではないので正確かどうかはわかりませんが、おそらく、色がバラバラすぎて、LED は、この色と決められないからではないでしょうか。

ほとんどの LED は、演色性が良くないのですが、まあまあ良いものもあります。


そして、ぱっと見にはわかりません。

グリーンの色カブリもひどいものと、まったく感じないものがあります。

一度シャッターを押してモニターで確認するしかありませんが、その場で判断するのは、かなり難しいと思います。

ホワイトバランスオートで撮るにしても、raw で撮って編集可能な状態にするしかありません。

セコニックの分光式カラーメータを使えば、演色性まで確認できますが高価です。

LEDだから良いとか悪いとかと言えないのが、困ったものなのです。

高演色タイプのLEDなら、まあまあの演色性(RA80くらい)があります。

僕がもし、飲食店オーナーだったら、店の照明は、すべて高演色タイプの LED にします。

お客様に、料理を美味しそうに見せる最も効率良い投資だと思うからです。

料理の色がキレイに写りますから、インスタ映えも間違いありません。

まとめ

・ミックス光で撮るときは、光源に注意する
・光色はホワイトバランスで調整できるが、演色性が悪い光源で撮ると難しい。
・安心して使える光源は、太陽光、白熱灯、ハロゲン、色評価用の蛍光灯(今は、ほぼ無い)
・水銀灯、ナトリウムランプは最悪。
・LED は、演色性が悪いものが多い。高演色LEDならまあまあ良い。