食べ物を自然光で 。2回目「点と面」

前回、料理写真は自然光だけでもキレイに撮れることを知ってもらおうと思って書きました。

ミラーレスか一眼カメラを使っっている人向けに書いています。

写真を撮ろうと思ったら、やはり、最初に意識したいのは光です。

プロカメラマンとアマチュアカメラマンの違いは、光の使い分けができるかどうかと言っても良いほどです。

面と点って何?と思うかもしれませんが、被写体から見た光源の大きさのことです。

裸電球のように一点で光っているのが点光源、大きな面全体から光を発して、ほわ〜っと光っているのが面光源です。

面光源は、点光源に比べ影が柔らかくまたは、なくなります。

ただし、巨大な太陽が地球から見ると小さく見えるように、大きな面であっても距離が離れると点に見えます。

食べ物でも、人物の撮影でも、プロマメラマンは、例外はあるけれど、ほとんどの場合、面光源を使います。

ソフトボックスというテントのようなものやアンブレラを見たことがあるかもしれませんが、それは、面光源を作る道具です。

反射させたり透過させたりして光を柔らかくし、肌や物の表面を滑らかに表現することができたり、表面の光の映り込みを連続した滑らかな面や線にすることもできます。

ここで、僕のスタジオの自慢させていただくと、天井一面のでかい面光源があっという間にセットできます。

スタジオ用語で言うと、天トレ(天井トレーシングペーパーの略)と言うやつです。

内緒ですが、これを使うと女性の細かな凹凸(シワとは、言っていません)は、たちどころに目立たなくなります。

これを利用して、金属表面の滑らかさを強調したり、人の髪の毛を艶やかに出したり、料理の写真では、シズル感を出したりします。

面光源使いをマスターしたら、写真の腕が数段上がるのは、間違いありません。

THE TOWER RESTAURANT YOKOHAMA(休館中)
THE TOWER RESTAURANT YOKOHAMA(休館中)のテラス席で撮影 山下公園と湾に面した素晴らしいロケーション

*撮った時に考えていたことと撮影データ

出てきたものを置いてすぐ撮ったので料理名も聞いていない。ホタテのカルパッチョかな、もしかしたらタイラギかも。
晴れの日の夕方、日が沈む頃に撮影。太陽光のみ。
太陽の方向(沈んだ)は、皿の向こう側、つまり逆光だが光は柔らかく回っているのでレフ板も無しでそのまま撮影。
太陽が沈んだ直後なので光は青いみがかっている。カラーメーターの出た目は、9000k
光がフラットすぎるのが気になったが、こんな時は、後で raw 編集できるのが本当にありがたい。


この時間の撮影は、刻々光と色が変わるので良いと思ったらすぐ撮るのがコツ。
外での撮影は、料理が風ですぐ乾いてしまうので、スピード勝負。
開放だとボケすぎるので少し絞る。

 raw で撮って調整しろを残した方が良い。


撮影データ Canon EOS-1Ds Mark II  EF70-200mm/f2.8 iso200 1/80sec f5.6  rawで撮影 三脚使用

・raw編集
Adobe camera rawで編集 色温度 9200k プロファイル Adobe ビビット
かなり青かったのを暖色系に補正。フラットな光だったので黒レベルを落として締める。コントラストを強調しながら白とびを抑える。


面光源をみつける

今日の写真は、太陽光の面光源だけで撮った写真だけ集めてみました。

自然の中の面光源、つまり曇った日の空です。こういう撮影の日曇っていたら、ヨシヨシいいぞと思います。

色は、晴れた太陽に比べ青みがかりますが、ホワイトバランスを合わせれば良いだけです。

日陰を探してウロウロしなくてすみますから、撮影の自由度が上がります。

曇っていたらそのまま撮れるかもしれないけど、もし、晴れていたらどうするかって、それは探すか作るかしかありません。

白い壁に陽が当たっていたら、最高の面光源になります。

被写体には陽が当たらず、壁だけにあたる状態を見つけるか、作ることができれば良いのです。

カメラの向こう側が壁の光源、真ん中に被写体、手前がカメラで料理写真に向いた逆光になります。

少しカメラ位置をずらしていけば、半逆光にもサイド光にもなります。

そんなこと言ったって、白い壁なんかないよというのなら、白い布を壁に貼ってください。それで大丈夫です。

影を作るのは、写真機材の透過アンブレラがあれば最高ですが、コンビニで売っている乳白色のビニール傘なども使えます。

僕の場合は、どんな時でもカメラバックに折りたたんだトレーシングペーパーとパーマセルテープ(写真用のガムテープ)が入っています。

直射日光が差し込む部屋だったら窓ガラスにトレペを貼ればOKです。背景と合わせて 1m 四方くらいあれば大丈夫だと思います。

トレペは、yodobashi.com で送料込み¥1,000くらいです。

多くの場合、料理の写真に向いているとされる光の方向は、半逆光です。ものによって変わりますが。

光が強い場合、影を少し明るくしたくてレフ板が欲しくなる時があります。

そんな時は、段ボールなどの厚紙に、白のコピー用紙を貼れば使えます。

アルミ箔の反射が鈍い方を貼れば、銀レフになりますが、これは使い方が難しいかもしれません。

皿一枚分の影おこし(かげを明るくする)ならA3くらいの大きさがあれば大丈夫です。

忘れてました、和室の障子越しの光は最高の面光源です。

陽が当たる障子がある人はぜひ試してください。

だだし、色温度はかなり落ちますからホワイトバランスの設定は気をつけてください。

測っていないので正確ではありませんが、たぶん昼の陽を透過させて 4000 ケルビンくらいかなと思います。

かなり暖色になります。

わからなければホワイトバランスオートでも、まあ大丈夫です。少しばらつきますが。

ツヤありのものを撮った時には、障子の骨が映り込むと思いますが、それも写真の味の一つとも言えます。整えるだけが写真ではありません。

もう一点、面光源は、被写体から距離が遠くなるにしたがって光質が硬くなり、点光源に近付きます。

面光源は、できるだけ被写体に近付けて使うのが面光源らしく使うコツです。

長くなってしまったのでまとめます。

周りで面光源になるもの。

・曇り空(ホワイトバランス曇りまたはオート)
・薄曇りの空(ホワイトバランス曇りか晴れか微妙、またはオート)
・晴れた日の日没直後(色は青いが、皿等艶のある被写体に綺麗なグラデーションの映り込みを入れられることがある)
・白い壁の反射光(ホワイトバランスは撮ってみてから決める、またはオート)
・障子の透過光(ホワイトバランス注意)
・レースカーテン越しの光(ものによるのでなんとも言えないけれど)

コツ。
・面光源は、できるなら、被写体に近付けて使う。

被写体にあたる陽を遮るのに便利なもの・レフ板がわりになるもの。
・写真用トランスルーセントアンブレラまたは乳白ビニール傘(細かいことだけれどブツに骨が写り込むことがある)
・トレーシングペーパー(細かいことだけれどブツにトレペのシワが写り込むことがある)
・ダンボールに白コピー用紙またはアルミ箔の梨地の方を貼る

生牡蠣
志摩方面に行った時取材させていただいた店の生牡蠣

*撮った時に考えていたことと撮影データ

 

車雑誌の車メインの撮影で志摩方面に行った時取材させていただいた店なのだけれど、すみません店名忘れました。
調べてみたら、多分ここというところはあったけれど、確かではないので書きません。
旅館のような作りの大きな店。撮影した時間は、データを見たら11:00 となっていたが、大繁盛していたから有名店なのだろうと思う。
海に面している席で窓から入る光のみ(窓は開いていてガラスを通していない光)で撮影。天気は明るい曇り。
光に関して考えたのは、置く場所のみ。
置いただけで綺麗な面光源が得られるのはありがたい。

撮影データ Canon EOS-1Ds Mark II  EF24-105mm/f4 iso200 1/30sec f6.3  撮影時ホワイトバランス 5500k  rawで撮影 
・raw編集

Adobe camera rawで編集 色温度5300k  プロファイル Adobe ビビット
レンズの周辺光量落ちがあるが、あえて補正しない。
牡蠣の殻が白く最初に目がいってしまうので部分補正で明るさを抑える。


牡蠣グラタン
上の生牡蠣と同じ店の牡蠣グラタン

*撮った時に考えていたことと撮影データ

 

上の生牡蠣と同じ店の同じ場所で撮影。
寄りたいのでマクロレンズに変えて撮影。違うのはレンズだけ。

撮影データ Canon EOS-1Ds Mark II  EF100mm/f2.8 iso200 1/40sec f5  撮影時ホワイトバランス 5500k  rawで撮影 
・raw編集

Adobe camera rawで編集 色温度5300k  プロファイル Adobe ビビット
レンズの周辺光量落ちがあるが、あえて補正しない。
ほぼ撮ったまま。


点光源と面光源比較

こちらは、自然光ではなくストロボで撮ったものですが、上の写真がカメラ上からの点光源、下のものが、斜め上からの面光源で撮ったものです。

どうでしょうか。

団子の滑らかさ、あんのとろ〜っとした質感に違いが見られると思います。

なぜ、面光源で撮るのか、わかるのではないでしょうか。

ストロボのように、自由な角度を選んでライティングするのは難しいですが、自然光でも、面光源を見つけて使うことで質感描写が変わります。

「おいしそう」は、その、ちょっとした質感の中にあります。

ぜひ、面光源を使って写真を楽しんでください。




まだまだ続きます。

次のブログは、使っちゃいけない光の予定です。