自分にとってベストのカメラとは?

WISTA FIELD 45SP
WISTA FIELD 45SP

N 社から、新しいカメラが発表された。ここのところ、各社フルサイズ一眼レフからフルサイズミラーレスへの動きが目立つ。

ミラーレスは、ボディをコンパクトにできること。ミラーがない分、フランジバックが短くできるので、レンズ設計の自由度が上がる。センサーそのものでピント合わせができるため、AFの精度が高いなど、一眼に比べ有利な点が多い。

一方、ファインダーの見え方が不自然などの点は、一眼に比べ不利だと言われる。

新型カメラに何を刺激されたのかは、わからないのだけれど、今は使っていないカメラを引っ張り出して見たくなった。すごく、昔のカメラに見えるかもしれない。でもこいつは、つい最近、2007年頃まで、仕事で使っていたカメラだ。

そして今でも、WISTA のカタログに載っている。2005年から、デジタルカメラで仕事をするようになってからも2〜3年、アナログで撮りたい仕事は、ほぼ、これで撮っていた。WISTA FIELD 45SPというカメラで、シャッターもバネ駆動の完全アナログカメラ。


カメラって、暗箱なのだとよくわかる。ピントを確認しフィルムを装填する後枠部と、シャッターとレンズがマウントされアオリ機能を持つ前枠部、それをつなぐ蛇腹で構成されている。

4×5フィルム

ホルダーに入った4×5インチサイズの大きなシートフィルムを一枚ずつ、差し込んで撮影

 する。

こういう大判カメラで撮る利点は、何と言っても画面が大きいこと。鮮鋭度、粒状性、階調、ボケ味などは、中判や35mmカメラとは比較にならないほど素晴らしい。フィルムが大きいことは、いいことなのだ。コストと大きさを除けば。デジタルも同様だけれど。

そして、どこのメーカーのレンズでも使えること。キレのあるレンズを選んだり、コマーシャルエクターのような、やわらかな描写をするオールドレンズを選んだり、無限の組み合わせがある。現代のデジタルカメラも、そんな規格になったらいいなと思う。

SONY Eマウントは、マウントの情報を他社にも提供しているから、それに近い使い方ができる点で楽しい。

WISTA 45SP ファインダー側
WISTA 45SP ファインダー側

これが、45SP のピントグラスで見た風景。

知っている人には、当たり前だけれど、上下逆さまに見える。だから、動く被写体を追う撮影には、向かないのだが、僕は、こいつでポートレイトを撮るのが好きだった。白黒フィルムかネガカラーフィルムで撮り、プリントする。

今は、もうない、ポラロイド社のタイプ55というイ

ンスタントフィルムもよく使った。ドロドロとした液がついたネガを亜硫酸ソーダ液につけておくと、ネガが取れる。これが、いい味出してくれたのだ。

亜硫酸ソーダ液入りのガラス瓶を、ロケにもよく持っていった。

撮影の動作に加えて、一枚撮るごとに、ネガを亜硫酸ソーダ液につけていくわけだから、今考えたら、手間がかかる撮影だったなと思うけれど、あの時は、あまり感じなかったうような気がする。

収納時の45SP
収納時の45SP

左の写真は、たたんだ状態の WISTA FIELD 45SP 大判カメラなのに、かなりコンパクト。さすが、フールドカメラだ。けれど、川まで1km ほど、カメラバックに入れて担いで思いだした。大判カメラは、重い。

ここまで書いて、便利になったカメラに、いつの間にか慣らされたものだと思った。あのころ、良い画質を求めたら、大型カメラで撮るという選択しかなかった。そして、軽い大型カメラは、無かった。使いたかったら体力をつけるか、アシスタントを増やすしかない。つまり、使う側が変わるしかなかった。

自動車の運転に似ているかもしれない。マニュアルシフトの車なら、シフトミスをしたら、自分が未熟だと思う。
オートマの車がスムーズに加速しないと、車の出来が悪いからだと思ってしまう。

カメラが時代とともに進歩して、何でもやってくれるようになると、つい、無い物ねだりをしたくなる。もっと軽くて、もっとAFが早くて、全面に合わせられて、ダブルスロットでと。でも、自分が思う通りというカメラは、まず、ない。

発想を変えて、自分がちょっと変わると、なんとかなることも多い。